vol.5
渡辺酒造の「蓬莱」
渡辺酒造店は、岐阜県飛騨市古川町にある酒蔵で「蓬莱」というブランドのお酒を醸造しています。店舗・酒蔵は飛騨古川駅から徒歩4〜5分の位置にあり、明治3年(1870年)から酒造りを始めました。今も残る当時からの白壁土蔵が歴史を感じさせます。お店には地元ファンから観光客まで多くの方が訪れ、お酒の試飲やお土産としてのお酒を購入できるのは勿論の事、酒蔵見学(要予約)を楽しんでいます。昔ながらの酒造りの現場を見ることができる、地域を代表する観光スポットにもなっています。 酒蔵見学では、酒造りで使用される大きな木桶や普段は入れない「室」を観ることができるだけでなく、 発酵途中の麹菌の音や香りを楽しむ事もできます。また、蔵人さんへ激励のメッセージを木桶に書けたりとお酒の味だけではなく、「五感で楽しむ!」をコンセプトにしています。 酒蔵見学体験は記憶となり、五感を刺激する体感は思い出となります。記憶は味わいに深みを与え、思い出は高揚感を演出してくれることでしょう。恋人、仲間、家族との大切なひと時、「蓬莱」で乾杯!
渡辺酒造の「蓬莱」 + EIRYO
渡辺酒造店は現在は九代目の渡邉久憲さんがその味を受け継いでおり、飛騨地域の地の利を活かした酒造りをしています。無色透明な液体ではありますが、その背景には150年以上にも及ぶ酒蔵の歴史があり、またこの飛騨高山という地域固有の風土や郷土文化の粋が凝縮されています。
お酒は米と水、そして麹というシンプルな原料の化学変化によって造り出されます。お米は「ひだほまれ」という飛騨地域のみで収穫される幻の米を筆頭に、全国各地の酒造好適米をキャラクターに合わせてチョイス・醸造しています。 「仕込水」は飛騨の天然水。山々に降り積もった雨雪は、落葉して堆積した広葉樹による腐葉土という自然の濾過装置を通って地下水となります。それを井戸で汲み上げたものが「仕込水」です。「仕込水」の成分は純度の高い純水で、美味しい酒造りに最適です。飛騨エリアのダイナミックな自然の恩恵が、数百年の時を超えて愛される「蓬莱」の味わいの土台になっています。 美味しい酒造りにおいてもう一つ大切な要素、それは蔵人たちの真心です。一つ一つの作業工程を ただひたすらに、一心不乱に取り組みます。指先に宿った“カン”を信じ、味わって下さるお客様の笑顔を思い浮かべて。自然の恩恵と蔵人たちの真心が合わさり、「蓬莱」が生み出されるのです。 また、このお酒は飛騨に住む方にとても馴染みのあるお酒です。ユネスコ世界無形文化遺産に選ばれている「飛騨古川祭」においては、神様への供物「御神酒」として。また、お祭りに参加した者同士が交流を深め合う際の潤滑酒にもなっています。「蓬莱」によって飛騨の自然・人・文化・伝統が繋がり、今後もますます、魅力的な地域へと“醸されて”いく事でしょう。
飛騨の味覚と「蓬莱 純米吟醸」
工藤英良(左) と 渡邉久憲さん(右)
+EIRYO vol.5
2024年4月6日発行
ご協力 : 有限会社 渡辺酒造店 様
発行人 : 工藤英良
写真 : 竹見脩吾
デザイン : 水口麟太郎, 福井 厚
編集・文 : 福井 厚
発行 株式会社EIRYO
東京都大田区田園調布5-56-4
TEL.03-6822-2274
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